超寿命300年耐久建築 ブリックス株式会社

創業者メッセージ

美しく長持ちする家を日本に広めたい

創業当時の矢内始
創業当時の矢内始
私は長年、日本の住宅業界の第一線で働いてまいりました。その中で感じていた疑問や理想が、ブリックスハウス株式会社を立ち上げるきっかけとなりました。

私は若い頃、大手住宅メーカーに勤めておりました。入社して間もない頃から、海外の住宅事情を学ぶため、世界中の住宅を視察する機会に恵まれました。北米、ヨーロッパ、アジア、中南米など、合計30カ国以上を訪れ、現地の建築様式や住文化に触れてまいりました。

その中で、私の心に最も強く刻まれたのが、ヨーロッパの美しい石造りの建物でした。古い街並みを歩けば、どの建物も重厚で格調高く、まるで時間が止まったかのような佇まいを見せています。レンガや石灰岩で造られたゴシック様式の教会、あるいは何百年も前に建てられた由緒あるお屋敷。それらは今なお当時の面影を残し、訪れる人々を魅了してやみません。

世界中の住宅を視察
建物の美しさもさることながら、私が感銘を受けたのはその耐久性の高さでした。500年前、1000年前に建てられた建築物が現在でも使われ続けているのです。風雪に耐え、歴史の荒波を乗り越えてきたともいえるでしょう。石という素材の強靭さ、そして石を積み上げるという一見シンプルな技術の奥深さを、私はその時、肌で感じたのです。

一方、1980年代当時の日本の住宅は、とても残念な状況にありました。バブル景気に乗じ、各社が競うように安価な住宅を大量に供給しておりました。工期の短縮を優先するあまり、品質が二の次になってしまっていたのです。木材を多用した粗悪なプレハブ住宅が、日本中に建ち並びました。わずか数十年で建て替えが必要になるような、耐久性の低い家ばかりでした。
ヨーロッパ建築と日本の住宅、その質の差は歴然としていました。大手企業に勤める身でありながら、私は強い焦りにも似た感情を覚えたのを今でも鮮明に覚えております。


「いつか必ず、美しく長持ちする家を日本に広めたい」海外視察を重ねるたびに、私の中でこの思いは強くなっていきました。日本人はもっと良質な住まいを手にする資格があります。安心して何世代にもわたり暮らせる、本物の家を提供したい。それが、私のライフワークになると固く心に誓ったのです。

しかし、理想の住宅を実現するには多くの障壁がありました。なかでも問題だったのが、日本の気候風土にそぐわないという点です。

ご存知の通り、日本列島は地震大国です。木造住宅であれば柔軟性があり、ある程度の揺れは吸収できます。そして倒壊したとしてもまた建て直せばいい。しかし石造りはそうはいきません。ヨーロッパ建築のように石を積み上げるだけでは、地震で容易に倒壊してしまうのです。第一、日本古来の伝統工法には石を扱う技術が乏しく、いきなりヨーロッパの建築スタイルを持ち込むのは難しい。

もう一つの課題は、コストの問題でした。日本では戸建て住宅の多くが木造です。これは、木材が比較的安価で手に入るという理由があるでしょう。一方、鉄筋コンクリート造りの住宅は、一般的に木造の2倍から3倍の建築費がかかるとされています。いくら高品質と言っても、価格が高すぎては普及は望めません。

私は幾度となく頭を悩ませました。理想の住まいを提供したい。けれど現実問題として、そのままではあの時見たヨーロッパの建築を日本に根付かせることはできない。
「どうすれば良いのだろうか」


私は決意しました。日本の風土にマッチした、新しい建築技術を生み出すしかない、と。それはつまり、ゼロから私自身の手で開発する他なかったのです。
この決意を胸に、大手住宅メーカーを退職し、独立する運びとなりました。多くの方から、「一人で大手に立ち向かうのは無謀だ」と言われました。妻からも、生活が立ち行かなくなるのではと心配されました。しかしもう、後には引けません。
「必ず理想の住宅を現実のものにしてみせる」 そう心に固く誓い、私は創業への一歩を踏み出したのです。

創業当初、私を悩ませたのは「素材」の問題でした。ヨーロッパ風の美しく丈夫な外観を再現するには、やはり石材を使うのが望ましい。けれども、木造住宅が主流の日本で、いきなり石造りを取り入れるのはハードルが高い。

そこで私が目を付けたのが、御影石(みかげいし)という石材でした。御影石は花崗岩の一種で、日本では古くから墓石や石碑に用いられてきました。建材としても高い評価を得ており、国会議事堂など由緒ある公共建築物の内装や外装に使われています。
この御影石は、硬くて耐久性に優れているのが特徴です。大理石のような多孔質の石材と異なり、水や空気を通しにくいため風化が起こりづらい。高級感のある重厚な見た目も、ヨーロッパの建物を彷彿とさせます。

「これだ!」私は御影石に新たな可能性を感じました。ただし、外壁として使うにはいくつか克服すべき課題がありました。

御影石
第一に、御影石は非常に固い反面、オーダーメイドの加工が難しい。御影石は硬度が高く、モース硬度は6~6.5程度といわれています。そのままでは使えず加工が必要で、そのままでは建築資材としては使えない。しかしパネル貼りにしてしまっては地震で崩れ落ちる危険性がある。どうすれば耐震性を確保しつつ住宅に応用できるか。

第二に、御影石を建材として活用している建築事例が日本では住宅という分野に限っては少ない。施工方法が確立されておらず、熟練の職人技が求められる。コストと工期の面で課題があると言わざるを得ません。
理想の住宅の実現には、これらの問題をクリアしなければなりません。


私は思案を巡らせ、ある着想を得ました。御影石と鉄筋コンクリートを組み合わせる、と。
鉄筋コンクリートの強靭さは、言わずと知れたところです。鋼材を格子状に組んだ骨組みの中にコンクリートを流し込む工法で、現代建築に欠かせない材料として広く普及しています。
一般的な住宅では、基礎部分に鉄筋コンクリートが用いられるケースが多いのですが、最近では構造体全体に適用する事例も増えてきました。ビルディングのように高層でなくとも、低層の戸建てなら施工は可能。高い強度と耐火性、耐震性を確保できます。
そこで私は、御影石の外壁の内側に鉄筋コンクリートを組み合わせることを考案したのです。外からは重厚な石造りの佇まいを見せつつ、内部は頑丈なコンクリート構造。まさに理想の住宅の骨格といえるでしょう。

ただ、アイデアを思い付くのは簡単でも、実際に形にするのは並大抵のことではありませんでした。御影石を外壁に用いる際、石材をどのようにカットし、組み上げていくか。そのためにはどのような金型が必要か。鉄筋コンクリートとの接合方法はどうすれば良いか。施工手順をどう最適化するか。

次々と解決すべき問題が立ちはだかりました。手探りの連続で、暗中模索の毎日。リーマンショック後の不況も重なり、事業資金は底を突きかけていました。
「もう無理かもしれない」幾度となく挫けそうになりました。


それでも私は、諦めることはできませんでした。「美しく、丈夫で、安心して末永く暮らせる家を提供したい」その思いだけが、私を支え続けてくれたのです。
紆余曲折の末、ついに理想の建材が完成しました。
それが、我が社の独自工法「Brix工法」の誕生です。

Brix工法
Brix工法の柱となるのは、特殊な形状の御影石ユニットです。工場であらかじめ成型された御影石を、現場で組み立てる形を取ります。石と石の間には専用の接着剤を用いて、強固に接合します。
ユニット状になった御影石の内側には、高強度コンクリートを流し込むスペースが設けられています。鉄筋を格子状に組んだ後、型枠の役割を果たす石材の中にコンクリートを打設。これにより石材とコンクリートが一体化し、強靭な複合構造体が出来上がります。

Brix工法には、従来の工法にはないメリットがあります。第一に、RCUユニットを用いることで、工期を大幅に短縮できること。御影石を必要な形に加工するのは工場で行うため、現場での作業が減り、効率化が図れます。

また、御影石ユニットは単体で自立させることができるため、建物を施工する際に足場を組む必要がありません。つまり、狭小地でも建築可能となるのです。都市部など土地の価格が高い地域で、有効な工法だと言えるでしょう。
そして何より、Brix工法の住宅は、美しさと強さを兼ね備えているのが特長です。

外壁に用いる御影石は、大理石のような多孔質の石材と異なり、雨風にさらされても風化や劣化が起こりにくい。その耐久性の高さは、目地のないシームレスな外観デザインを可能にしてくれました。重厚で美しい佇まいは、100年経っても色あせることはないでしょう。

また万が一、近隣で火災が発生しても、延焼を防ぐ効果が期待できます。御影石は不燃材であり、高い耐火性を発揮するからです。阪神・淡路大震災では、火災旋風によって多くの木造住宅が焼失したと聞きます。Brix工法なら、そうした二次被害のリスクを大幅に減らせるはずです。
内部の鉄筋コンクリート構造が、地震に対する強靭さを担保します。阪神・淡路大震災クラスの大地震でも、倒壊や崩落の危険は低い。木造に比べ耐用年数ははるかに長く、100年を優に超える長寿命化が見込めるでしょう。
つまりBrix工法の住宅は、安全性と居住性に優れているのです。
こうした点が評価され、Brix工法は瞬く間に注目を集めるようになりました。おかげさまで、多くのお客様にご愛顧いただけるようになったのです。


しかし、私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。
いつの日か、Brix工法が日本の住宅の新たなスタンダードとなる。そう信じて疑いません。伝統的な木造住宅が強み、という常識を覆し、理想の住まいを選択肢の一つとして提案し続けたいと考えております。

また視野を広げれば、アジアをはじめとする海外の国々でも、課題は山積しています。
発展途上国や戦場となってしまった国では、まともな住宅を建てられない人が大勢います。一方で都市部では、安全性の低い粗悪な集合住宅が次々と建設され、住環境の悪化が問題視されています。

Brix工法なら、現地の石材を利用し、ユニットを設計しノウハウを提供することで、低価格で良質な住宅を提供できるかもしれない。現地の人々が自ら家を建てられるよう、技術の移転にも取り組んでいきたい。
都市のスラムに、例えば南米のファヴェーラに、戦場になってしまったウクライナに安心して暮らせる我が家を。理想は、我が国だけにとどまりません。
そして、Brix工法に託す思いも、家だけにとどまりません。


住宅は人生の基盤であり、暮らしそのものです。
「明日への活力になる家」 「家族の絆を深める家」 「喜怒哀楽を共にできる家」
そうした住まいを、Brix工法で実現したい。
美しく、丈夫で、何より心地良い。
そんな当たり前とも言える、けれど本当は一番大切なことを、私たちは住宅づくりを通じて追求していきます。100年後も、いや200年後も。 ブリックスハウスが、変わらぬ佇まいで皆さまの暮らしを見守っていられるよう。
私は、これからも理想の住まいの実現に向けて、あくなき挑戦を続けていく所存です。

長くなりましたが、以上が私とブリックスハウスの、現在に至るまでの物語でございます。
あなたの理想の住まいをブリックスハウスで建てられるその日を楽しみにしております。

矢内始